Column不動産リスク分析

マンションの最大下落幅を想定して、心の準備をしておく

リーマンショックデータで見る「最悪ケース」の数字

データ出典:国土交通省「不動産取引価格情報」(2005〜2025年)

相場が軟調だという投稿が流れたと思えば、今度は強気の投稿が溢れる。SNSのタイムラインが目まぐるしいとき、私が意識しているのは「最悪のケースをあらかじめ想定しておく」という習慣です。過去20年のデータで、東京中古マンション市場の最大下落幅を具体的な数字で確認してみましょう。

最悪を知ることが、感情の緩衝材になる

事前に最悪を知っておけば、株なら5%の調整で狼狽売りせず、50%の暴落が来てもある程度の受け身がとれる。 資産構成にも反映できる(現金・債券を厚めに持つなど)。 S&P500の直近過去最大ドローダウンはリーマンショック時の約57%。 これを知っていると「今回は10%下げた、もう終わりだ」と右往左往にはならない。知識と準備が感情の緩衝材になってくれます。

では不動産はどうでしょうか。直近20年のデータで東京中古マンション市場を振り返ると、 最も下落圧力が強かったのはリーマンショック前後(2007〜2009年)です。

2005〜2025年:ゾーン別価格推移

当サイトの独自集計による2005〜2025年のゾーン別中古マンション取引価格推移がこちら。 都心・城東・城南などエリア別に色分けしており、リーマンショック(2008年)の谷と、 その後の長期上昇局面が読み取れます。

2005〜2025年 ゾーン別中古マンション取引価格推移
2005〜2025年の首都圏ゾーン別中古マンション価格推移(点線は日経平均)。赤枠がリーマンショック前後

リーマンショック前後の拡大:エリア別の下落幅

2007〜2009年を拡大して見ると、リーマンショックは2008年9月を起点に発生し、そこから1年は株価が下落を続けました。 日経平均は約半値(-50%)まで落ちています。一方、都内の中古マンションの下落幅は株価に比べると限定的です。

2007年初頭を起点(=100)としたとき、2009年第2四半期の価格水準は以下のとおりです。

エリア2007年初頭=100とした2009年Q2水準主な区
都心3区78千代田・中央・港
副都心3区88新宿・渋谷・豊島
城南83品川・目黒・大田
城東97墨田・江東・葛飾
城西104杉並・世田谷・練馬
城北96北・足立・板橋
日経平均50(参考:株式市場)

また、四半期ごとの騰落率(23区全体)は、下落幅のMaxが-5.77%(2008Q4)となっています。 株式と比べると不動産の最大下落幅は相対的に小さく、城西に至っては上昇しています。 景気がよかろうが悪かろうが、住む需要に変化はないためと考えられます。

2007〜2009年 四半期騰落率(前期比)棒グラフ
四半期騰落率(前期比)。2008Q4の-5.77%が最大下落幅
リーマンショック前後(2007〜2009年)の中古マンション価格推移拡大グラフ
リーマンショック前後(2007〜2009年)の拡大グラフ。都心3区が最大-22%、城西はプラスを維持

駅別で見ると:25駅は-50%、103駅は-30%

ただし上記の折れ線グラフは「中央値」ベースのため、個別駅では分布に大きなばらつきがあります。 411駅のうち、リーマン前後で50%の下落となった駅が約25駅30%の下落となった駅が約103駅存在していました。

流動性の低さがある分、「下落中でも売れない」という精神的コストは株より大きい面もあります。 とはいえ、100年に一度と言われたリーマンショックですら、都内マンションはおおむね10〜20%の下落だったことが読み取れます。

リーマンショック前後(2007〜2009年)の駅別上昇率分布・411駅
411駅の上昇率分布。-50%が25駅・-30%が103駅。一方で上昇した駅も存在する

神奈川・埼玉・千葉:郊外は堅調を維持

神奈川・埼玉・千葉のリーマンショック前後の価格推移も確認しましたが、 こちらはリーマン時も堅調に価格を維持していました。 郊外の実需層(ファミリー向け購入)は投資目的の買いが少なく、 景気変動の影響を受けにくい面があると考えられます。

神奈川・埼玉・千葉のリーマンショック前後のマンション価格推移
神奈川・埼玉・千葉のリーマン前後の価格推移。3都県とも比較的安定を維持(点線は日経平均)

まとめ:「想定内」にしておくことがメンタルゲームの要諦

資産形成は突き詰めるとメンタルゲームだと思っています。 正しい知識を持っていても、暴落のニュースが流れた瞬間に感情が先走って判断を誤る。 あるいは相場が好調なときに過剰なリスクを取ってしまう。

だからこそ「最大でこのくらい食らう可能性がある」という数字を平時に頭に入れておくことが大切です。

  • ·リーマンショック(史上最大級の危機)時、都内中古マンションはゾーン中央値ベースで最大-22%(都心3区)
  • ·四半期ごとの最大下落幅は-5.77%(23区全体)
  • ·駅別では25駅が-50%、103駅が-30%という分布。一方で城西や郊外3県はほぼ維持
  • ·株式(日経平均-50%)と比べると下落幅は相対的に小さいが、流動性の低さによる精神的コストは別途存在する

相場の先行きは誰にもわかりません。ただ、過去の最大下落幅を知っておくことは、 次の嵐が来たときに「想定の範囲内だ」と構えるための、一番手軽な保険です。想定内の出来事は、感情的なダメージが格段に小さいからです。

すでにポジションがある人も、これから買う人も、こういった心の準備をしておくことが 心の平穏を保つ手段になるのではないでしょうか。

データ出典:国土交通省「不動産取引価格情報」(2005〜2025年)/ リバベル都市開発研究所 独自集計・分析

本記事は参考情報の提供を目的としており、投資・購入等の意思決定の根拠となるものではありません

過去のデータは将来の価格動向を保証するものではありません