Columnマンション価格・年収分析

坪単価700万ってだれが買うの?

年収×坪単価の適切なマッピングをデータで考察

データ出典:国税庁「民間給与実態統計調査」・国土交通省「不動産取引価格情報」

Xでマンション関連の投稿を見ていると、非常にレベルの高い会話が飛び交います。最近「晴海の在庫がだぶついて暴落傾向」という論調の投稿が散見されていましたが、値下げされた結果が坪700万というものがザラでした。坪700万といえば70㎡3LDKで約1億4,900万円——暴落して1.5億?1.5億のローンって、どれくらいの方々が払えるのでしょうか。

坪単価と支払い可能な年収の関係

住宅ローンスペシャリストの間では「借入額は年収の5倍(切り詰めても7〜7.5倍)まで」が 適切な水準とされています。 35年・金利1%フルローンの場合、返済比率(額面に占めるローンの割合)は17〜25%程度になります。

1.5億のローンを返済するには、35年・金利1%として月約42万円(年間約504万円)の返済が必要です。 つまり年収2,000万円の方が返済比率25%ギリギリでようやく支払える金額です。

坪単価70㎡3LDK 概算価格必要年収の目安前提(返済比率25%・35年1%)
700万約1.49億約2,000万25%返済
500万約1.06億約1,500万25%返済
350万約7,400万約1,000万25%返済
250万約5,300万約750万25%返済
坪単価別・間取り別価格シミュレーション表。350万・300万・250万・200万/坪 × 3LDK70㎡/2LDK55㎡の組み合わせで物件価格と必要年収を一覧化
坪単価×間取り別シミュレーション。坪350万の3LDK70㎡が7,400万(必要年収990万)。坪250万の2LDK55㎡なら4,200万(560万)と現実的な価格帯に

坪500万の3LDK(約1.1億)は年収1,500万で手が届き、 坪350万の3LDK(約7,400万)は年収1,000万で射程に入るレベルです。

X界隈で盛り上がる価格帯は「浮世離れ」している

上記から、坪700万円がいかに「普通ではない価格帯」であるかがうかがえます。 SNSで盛り上がるこの価格帯の会話は、ある意味でとても特異な世界です。

ただし近年は個人の収入以外の要素も無視できません。 1馬力か2馬力か、手持ち資産・実家援助・相続がどれだけあるか、 年齢・リスク許容度など複数のパラメータがあります。 特に近年はパワーカップルの台頭・株高・円安などで 単純に個人の年収だけで語れない部分はあり、 強気な購買姿勢は少しずつ強まっているようにも見られます。

  • ·世帯年収1,500〜2,000万の層で「住宅価格が上昇しそう」と答える割合が66%(リクルート調べ)
  • ·世帯年収1,200万以上では2次取得層(住み替え)が6割超
  • ·パワーカップル × 2次取得層の購入意欲が特に強い傾向

坪700万を買えるのは何%の人?

日本全国の年収分布と、最もマンション購入意欲の高い東京都・男性・35〜44歳の年収分布を見てみましょう。

全国・全性別・全世代の年収分布グラフ。中央値301万・平均370万。年収1,250万超は累積98.3%(上位1.7%)
全国・全性別・全世代の年収分布(中央値301万・平均370万)。年収1,250万超は全体の約1.7%。坪700万が買える2,000万超はほぼ見えないレベル
年収ライン全国割合東京・男性・35〜44歳対応する価格帯
1,000万円超約4%約12〜17%坪350万3LDKが射程に入る層
1,500万円超約1%約2〜4%坪500万3LDKが射程に入る層
2,000万円超1%未満1%未満坪700万3LDKが射程に入る層

全国では年収1,000万超が約4%、1,500万超が約1%です。 東京都・男性・35〜44歳という最もマンション購入に積極的な層に絞っても、 年収2,000万超(=坪700万3LDKが買える層)は1%にも満たないでしょう。

東京・男性・35〜44歳の年収分布

下図は当サイトの年収分布ダッシュボードから、東京都・男性・40〜44歳と35〜39歳を抜粋したものです。 全国と比べて高所得層の割合は高くなりますが、それでも坪700万クラスが「普通」になる年収2,000万超は、ごくわずかな割合です。

東京・男性・40〜44歳の年収分布グラフ。中央値616万・平均678万。年収1,250万超は累積92.3%(上位7.7%)
東京・男性・40〜44歳(中央値616万・平均678万)。全国平均の2倍近い水準でも年収1,250万超は上位7.7%。坪700万の買い手は依然として少数
東京・男性・35〜39歳の年収分布グラフ。中央値597万・平均643万。年収1,250万超は累積95.8%(上位4.2%)
東京・男性・35〜39歳(中央値597万・平均643万)。40〜44歳より若干低く、年収1,250万超は上位4.2%。坪700万を買える2,000万超はさらに少ない

首都圏・東京都の坪単価分布

物件数の観点から坪単価の分布を見ると、 坪700万超の物件がいかに少数であるかも確認できます。 市場の「ボリュームゾーン」は坪250〜400万円帯にあり、 そこが最も多くの人が手を届かせている現実の相場です。

首都圏全体の坪単価別取引件数分布。100〜200万が最多(89,504件・33.4%)。700万超は5,300件・2.0%のみ
首都圏全体の坪単価別取引件数。坪100〜200万がボリュームゾーン(33.4%)。坪700万超はわずか2.0%(5,300件)にすぎない
東京都内の坪単価別分布(23区・市部)。区別・市別の詳細分布と坪単価中央値。港区5,137万・千代田区5,117万がトップ
東京都内の詳細分布。23区でも坪単価中央値は港区5,137万・渋谷区4,517万が突出。世田谷区は283万と意外な低さ。郊外市部は100〜200万が大半

まとめ:坪700万の会話は「理三の世界」

甲子園に出られる高校生は全高校球児(約12万人)の0.5%程度。 模試の偏差値70は上位2.5%、偏差値73〜74(東大理三レベル)が上位1%です。

坪700万の会話が聞こえてきたら、 「ああ、甲子園経験者か理三の人たちの会話なんだな、すごい!」 と感じればよいと思います。 SNSの盛り上がりに振り回されず、自分の年収・ライフスタイルに合った 坪単価レンジを地に足をつけて考えることが、住宅選びの第一歩です。

  • ·地に足の着いた予算感 = 年収の5〜7.5倍・返済比率17〜25%
  • ·坪350万(年収1,000万)〜坪500万(年収1,500万)が現実的なボリュームゾーン
  • ·坪700万はX界隈の「浮世離れした会話」——焦る必要なし

年収分布データ出典:国税庁「民間給与実態統計調査」/ 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」

坪単価データ出典:国土交通省「不動産取引価格情報」/ リバベル都市開発研究所 独自集計

返済シミュレーションは35年・金利1%・元利均等返済を前提とした参考値です

本記事は参考情報の提供を目的としており、投資・購入等の意思決定の根拠となるものではありません